AIを使うかどうかに関係なく、既存のロゴを参考にするのはよくあることです。
ただ、どこまで似たらパクリかの線は、特許庁にも文化庁にも、日本グラフィックデザイン協会にもありません。
商標を取る・取らないに関わらず、作ったロゴを出していいかの決め方をまとめます。
ロゴが似ているかは、著作権と商標で見る所が違う
商標は、見た目・読み・イメージをまとめて見て判断します(特許庁の審査基準)。
著作権は、参考にしたかと、形や描き込みまで共通しているかで判断します(文化庁)。
ぱっと見:ケースごとに関係するルールと、起こりうること
よくあるケースごとに、関係するルールと起こりうることを並べます。
| よくあるケース | 関係するルール | 起こりうること |
|---|---|---|
| 有名ブランドのロゴに寄せた | 不正競争防止法。全国的に知られた著名なブランドで、ただ乗りや、イメージを薄めることにあたる場合 | 条件にあたれば、商品・サービスが違っても、間違われなくても、警告・使用の停止・損害賠償 |
| 商品・サービスが近い登録ロゴと、見た目・読み・イメージをまとめて見て紛らわしい | 商標法 | 出願は通らない。使っていれば警告・使用の停止・損害賠償 |
| 既存の作品をリファレンスにして、形や描き込みまで似せた | 著作権法 | 使用の停止・損害賠償 |
| 商品・サービスが違う、有名ではない登録ロゴと似ている | 商標法(マーク×商品・サービスの組み合わせ) | 商品・サービスが関連しないと判断されれば、侵害にならない |
| テイストやよくある形だけが似た | 著作権では、アイデアとして扱われる | 著作権では引っかからない |
| リファレンスなしで作ったら、たまたま似た | 著作権は、参考にしていなければ侵害にならない(依拠) | AIの学習データに入っていた作品なら、知らなくても参考にしたと見なされる |
規模のイメージは、次の2つです。
・日本で登録されている商標は、約230万件(2024年末、特許庁)
・商標をもとに警告状などの書面を受けた企業は、回答4,790者のうち238者(過去5年、特許庁、2025年度)
調査の対象は、年に5件以上の出願がある企業です。
デザイナー一般の割合ではなく、自分のロゴがもめる確率でもありません。
著作権と商標は、比べる相手も見る所も違う
| 著作権 | 商標 | |
|---|---|---|
| 比べる相手 | 既存の作品(商品・サービスは関係ない) | 登録されたロゴのうち、商品・サービスが同じか似ているもの。登録していないロゴでも、よく知られた表示なら不正競争防止法が関わる |
| 見る所 | 形や描き込みといった表現が共通しているか | 見た目・読み・イメージ(外観・称呼・観念)をまとめて見て紛らわしいか |
| 参考にしたかを見るか | 見る(依拠) | 見ない |
商標は、知らずに使っていても言い訳になりません。
商標法に「知っていたか」という条件が無いからです(第25条・第37条)。
著作権で守られるかどうかが、条件しだいのものもあります。
・書体(フォント)の形そのもの。最高裁は、ほかに無い際立った特徴があり、それ自体を鑑賞できるものに限るとした(ゴナU事件)
・AIで作った部分。作ろうとした意図と、人がどれだけ手を入れたかで決まる
・アイデアを伝えるだけの指示は、手を入れたことにならない(文化庁)
特許庁の審議会資料は、AIで作ったかどうかを区別していません。
ほかのロゴと同じ条件を満たせば登録できる、という整理です。
ただし、これは審議会の議論用の資料です。
決まった審査基準ではありません。
商標を取るかどうかを決めるのは、多くの場合クライアント(事業側)です。
デザイナーは、リスクを知って問題の起きないロゴを作る側になります。
商標に引っかかると何が起きる?出願の審査・警告・有名ブランド
商標で引っかかるのは、出願から登録の後までと、ロゴを使っているときです。
どちらも、商品・サービスの近さと、見た目・読み・イメージの近さで見られます。
有名ブランドだけは、例外があります。
出願したとき:審査で止まる
・先に出願された似た登録商標があり、商品やサービスも同じか似ていれば、登録できない(商標法 第4条第1項第11号)
・マークは見た目、読み、イメージをまとめて見る。商品やサービスは、類似群コードが同じなら似ていると見なされる(特許庁)
・登録された後も、他社からの異議や、登録を無効にする請求でひっくり返ることがある(第43条の2、第46条)
見るのは業界名ではなく、商品やサービスが似ているか、関連するかです。
出願の区分(第◯類)も、類似の範囲を決めたものではありません(特許庁)。
使っているとき:権利者から警告や請求が来る
・登録していなくても、ロゴは使える
・ただし、他社が似た商標を登録していれば、警告や請求が来ることがある(特許庁)
・求められるのは、使用の停止(差止め)と損害賠償です(商標法 第36条、第38条)
・先に使っていても、広く知られていなければ、後から登録した人の権利を侵害することがある(先に出願した人が強い)
・先に使っていた人は、条件がそろえば使い続けられる(先使用権、第32条)
・条件は、相手の出願より前から、不正な目的なく使っていること
・そのうえで、出願の時点でお客さんに広く知られていること
知らずに使っていても、注意を怠ったと見なされます。
(商標法 第39条で、特許法 第103条を準用)
有名ブランドは、条件を満たせば商品・サービスが違っても守られる
・全国的に知られた著名な表示なら、間違われなくても不正競争防止法で守られる(第2条第1項第2号)
・問題にされるのは、ブランドの引きの強さへのただ乗りや、イメージを薄めること(経済産業省のテキスト)
AIで作ったロゴでも、ここまでの判断は変わりません。
商標は参考にしたかを問わないので、AI特有の見方は無い、という整理です(特許庁の審議会資料)。
ロゴの類似を作例で比べる。商標と著作権で見る所を分けて
ここからは、この記事のためにAIで作った架空のカフェのロゴで比べます。
見本Aをリファレンスにして、例B〜Eを作りました。
比べ方は2つあります。
・商標:並べて見分けられるかではなく、その商品やサービスを選ぶ人(需要者)の記憶に残る印象で見る(特許庁 商標審査基準)
・著作権:元の作品らしさが伝わってくるかで見る(文化庁)
実在のロゴは参考画像に入れず、テイストだけを言葉で指定して出しました。
例B〜Eは4つとも見本Aを見て作ったので、著作権の「参考にした」(依拠)には、どれも当てはまります。
各ロゴの◎◯△×は、この2つの見方を当てはめた結果です。
最後は裁判所が1件ずつ判断するので、確定した判定ではありません。
・◎ 共通するのはテイストだけ。そのまま出せる
・◯ 見た目の系統は近いが、モチーフも読みも違う。アクセントやカラーまで同じなら、外しておくと安全
・△ 商標か著作権のどちらかで、共通点が残っている。直せば使える
・× どちらの見方でも共通点がある。作り直す
見本Aと、例B〜Eを比べる

例B × 作り直す
・商標:見た目も読みもイメージも近く、扱う商品やサービスも同じ(LUNOWL/LUNOUL)
・著作権:フクロウの形と、羽のカーブの描き込みまで同じ

例C △ モチーフから変える
・商標:タッチもカラーも読みも違うが、モチーフとシルエットが同じで、イメージ(月とフクロウ)も同じ
・著作権:共通するのはフクロウというモチーフと、円と白いリングのシルエット(描き込みは違う)

例D ◯ 出せる(気になるなら月かカラーを外す)
・商標:モチーフも読みもイメージも違い、近いのはシルエットとタッチ、月のアクセント、カラーの系統
・著作権:共通するのは円と白いリングのシルエット、カーブのタッチ、月のアクセント(描き込みとモチーフは違う)

例E ◎ そのまま出せる
・商標:共通するのはシルエットとタッチの系統だけで、モチーフもカラーも読みもイメージも違う
・著作権:似ているのはテイストなので、アイデアの扱いになる
パクリになるかは、この4つで決まる
問題になるかは、次の4つで決まります。
・商品やサービスが近い登録商標と、見た目も読みもイメージも紛らわしくないか(商標)
・リファレンスにした作品と、形や描き込みまで共通していないか(著作権)
・有名ブランドに寄せていないか(不正競争防止法。商品やサービスが違っても関わる)
・AIに実在のロゴを入れていないか。入れると参考にした側になる(文化庁)
4つとも問題なければ、そのまま出せます。
当たったときにどこを変えれば離れるかは、作例に出ています。
・タッチやカラーを変えるだけでは離れない(例C=△)
・モチーフと読みを変えると離れる(例D=◯)
・共通するのがテイストだけになれば、そのまま出せる(例E=◎)
ただし、アイデアと表現の区別はケースバイケースで、どこからが表現かの線は資料にありません。
作例のテイストは有名なカフェに寄せているので、3つ目も関わります。
リファレンスなしで作ったロゴが、たまたま似ていたら
人が知らずに作って似ただけなら、著作権の侵害にはなりません。
ただし、AIで作った場合は、学習データとの関係という条件が加わります。
文化庁の資料は、次の3つに分けています。
・自分が元の作品を知っていた場合は、参考にしたとされる
・知らなくても、AIの学習データに入っていた作品に似たら、ふつうは参考にしたと見なされる
・知らずに、学習データにも入っていなければ、たまたま似ただけで侵害にならない
実在のロゴを画像としてAIに入れること(Image to Image)は、参考にしたとされる例に挙がっています。
学習データに入っているかは、確かめられない
学習データの中身は公開されていないので、入っていないことを確かめる方法はありません。
もめたときに見られるのは、相手のロゴを見られる状況だったかと、どのくらい似ているかです。
学習データに入っているか分からなくても、権利者がこの2つを示せば、参考にしたと推認されます(文化庁)。
・知らなかった、たまたま似ただけ、という説明は、似ているほど通りにくくなる
・ゼロから作ったと示す方法を具体的に書いた資料は、特許庁にも文化庁にも無い

A店とB店 △ 著作権は問題ないが、商標は別
・著作権:2店とも相手のロゴを知らず、AIの学習データにも入っていない想定なら、たまたま似ただけで侵害にならない
・商標:知らずに使っていたことは関係なく、先に登録した側がいて紛らわしいと判断されれば、もう一方は使えなくなる
ロゴの類似チェックのやり方と、調べきれない範囲
公開や納品の前に確かめられるのは、商標の登録、実際に使われているロゴ、自分の手元の記録です。
どれにも、調べきれない範囲があります。
まず、商標の調べ方です。
・① J-PlatPatで、自分の商品やサービスの類似群コードを調べる(例:印刷物は26A01)
・② 「称呼(類似検索)」にネーミングの読みを入れ、①のコードで絞る。音や響きが似た読みも出てくる
・③ 「図形等分類表」でモチーフの分類を選び、図形で探す
・④ 周知や著名と認められた商標を探す検索もある(INPITのマニュアル)
・⑤ 登録していないロゴも、同じか関連する商品やサービスでの使用をネットで探す
⑤を見るのは、よく知られた表示と紛らわしい使い方が、不正競争防止法で止められるからです(第2条第1項第1号)。
先に使っていた人の権利(先使用権)も、実際に使われているロゴの話です。
画像そのもので探したいときは、WIPOのGlobal Brand Databaseが無料で使えます。
ロゴ画像を上げて、形やカラーで探せます。
日本の商標も入っています。
著作権の側で確かめられるのは、次の2つです。
・何をリファレンスにしたか、AIに何を入れたかを書き出す
・Google Lensで画像検索し、似た作品がネットに出ていないかを見る
画像検索で何も出なくても、オリジナルとは言えません。
ネットに無い作品や、AIの学習データは調べられません。
J-PlatPatの検索結果も、登録を保証するものではありません(INPIT)。
公開前に、似たロゴが見つかったとき
・見つかったロゴと自分のロゴを、商標の4つの見方で並べる
・調べ方や結果の見方は、知財総合支援窓口に相談できる(全国47都道府県、無料)
出願が、似た登録商標を理由に通らなかったとき
・先に登録した人の承諾があり、間違われるおそれが無ければ登録できる(コンセント制度、2024年4月から)
・同じ商標で、商品やサービスも同じ場合には使えない(特許庁)
使っていて、警告が来たとき
・まず中身が正しいかを調べてから動く。警告には行き過ぎや勘違いもある(INPIT)
・侵害かどうかの判断は、特許庁の判定制度に出せる(手数料4万円、2024年の平均で8か月ほど)
ロゴを公開・納品する前に見る、AIツール・フォント・コンペの規約
似ているかとは別に、使ったツールやフォントの規約で決まることがあります。
そのロゴを使ってよいか、商標登録できるかです。
まず、フォントのライセンスから見ます。
| ライセンスのパターン | 当てはまるフォントの例 |
|---|---|
| ロゴに使えて、ロゴの商標登録もできる | Adobe Fonts(フォントのデザインそのものは登録できない)/LETS(モトヤLETSは申請前に有償の契約)/イワタ |
| ロゴに使えるが、ロゴの商標登録はできない | モリサワ(タイプバンク製品)/学生向けLETS |
| プランで変わる | Morisawa Fonts(スタンダードプランなどは登録できる。フリープランはできない) |
| 商標登録するロゴや、営利のロゴは別契約 | ダイナコムウェア/視覚デザイン研究所 |
| ロゴに使えるが、商標登録の記載は無い | Google Fonts/OFLのフォント |
有料か無料かでは決まらず、同じ販売元でも製品やプランで違います。
・アウトライン化した文字の改変は、Adobe Fonts、Klim、Grilli Typeが認めている
・この3社とも、フォントのファイル自体の改変は認めていない
・画像で納品するなら、クライアントのライセンスは要らない(Adobe Fonts)。Envato Elementsは、フォントをクライアントに使わせられない
AIツールとコンペのルール
ここから先は著作権や商標とは別で、使うときに同意した規約で決まります。
規約は、同意して使えば契約の内容になります(民法 第548条の2)。
・同じような指示なら、他の人にも似たロゴが出る。自分だけのロゴになるとは限らない(OpenAIとCanvaの規約)
・Canvaのテンプレートや素材を使ったロゴは、Canvaの規約では商標に使えない。誰でも使える素材で、権利が独占にならないため
・Adobe Fireflyは、他人の作品を参照画像に上げること自体を禁止。出たロゴが似ていなくても違反で、アカウントを止めることがある
・ロゴの案をAIで作って出せるかは、サイトで違う。99designsのコンペは不可、Fiverrは可、クラウドワークスは発注者との取り決め
特許庁は商標法の条件で審査するので、規約に反していても、条件を満たせば登録されます。
登録されても、ツールとの契約に反した状態は残ります。
AIツールの規約で出力が自分のものになっても、他の人が作った似た画像には何も言えません(OpenAI)。
商標登録で独占できるのは、登録した商品やサービスの範囲だけです(商標法 第25条)。
調べるかどうかを決めるのも、作る側
パクリになるかの4つのうち、3つは調べなくても自分で分かります。
調べないと分からないのは、似た登録商標があるかだけです。
どこまで調べるかは、案件ごとに変わります。
ただ、仕事として受けると、侵害していないことを保証する側に立ちます。
・クラウドワークスは、侵害していないことをワーカーがクライアントに保証すると定めている(利用規約 第18条第2項)
・保証に反していたら、ワーカーが損害賠償その他の責任を負うとも書いてある(同)
・99designsのコンペは、参考にするのはよいが、似すぎたものは複製として扱う
・保証の範囲を著作権だけに絞る書き方もある(伊藤海法律事務所)。商標や意匠は、知らずに似ても侵害になるため
調べないと決めるのも判断で、その責任は作った側に残ります。
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